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第5回「シークレットポイントinロンボク島」 前編

私は運に見放されていたと思っていたが、ついに私にも運がやってきた! ロンボク島でかなり多くのシークレットポイントを知っているインドネシア人にあった。彼は快くその秘密の場所へ連れて行ってくれたのだ。本当にその日は、すばらしい日だった。そのインドネシア人は「Seperti Sorga di dunia! (そこは、まるで地球の天国さ!)」と彼は手足を広げてストレッチしながら、ニッコリ笑いウィンクし自慢げに言った。その場所は奥深いインドネシアの未開の地にあり、私が探し求めていたシークレットポイントがあったのだ。その年、私はついに誰もいないパーフェクトウェーブを見つけることが出来たのだ。

「そこはウルワトゥぐらい、いいのか?」と私は飛びつくように聞いてみた、彼は「2倍いいよ!」と言う、「そこは一日中、オフショアでうねりが大きく「High-tide OK!Low-tide OK!心配することないよ!」と彼はしっかりとサーフィン用語を使って答えたのだ。

「そこはグラジャガンぐらい、いいのか?」と私がまた質問すると、再び彼は「2倍いいよ!」と答える。「そこはかなりの距離でロングライドできるし、人はいないし、絶対クローズアウトしないよ!」と、彼は少しオーバーな言い方で天に向かって投げキッスし、その手を‘The Shaka’と入ったサーファーズ看板の方へ指さした。

彼は好奇心旺盛で、お節介なサーフ・スパイまたは海賊のようだった。私はこれから彼を‘Pirate’と呼ぶだろう。私は混雑したワルン(屋台)に入り、彼の代わりに用心しながら辺りを見回し、彼が手招きする隅にあるひっそりとしたテーブルに座り、私たちのこれからの計画を話し始めた。

‘Pirate’は「まず最初に、この話を決して誰にも話さないと誓えるか?」と小声で囁いた。そして彼は辺りを怪しむように見回して周りに聞こえてないか気を配った。

私は心の底から誓った。私はgood waveを見つけるためなら何でも進んで行えるだろう。以前、私は遠く離れたインドネシアの奥地、霧が立ち込める熱いジャングルの中を10日間 延々と歩いてシークレットポイントを探したことがあった。だがシークレットポイントは見つからず、他のサーファーを見つけただけだった。さすがに精神的、肉体的に打ちのめされた。そんな苦労を思えば私は何だってしようと思うのだ。

「君はそこへ誰かを連れて行ったことがあるのか?」と私は彼のように小声で囁いた。「ポール・キングを知ってる?」‘Pirate’はそう言って、ニタつきながら生意気な感じで自慢してきた。私は大きく息を呑んだ、ポール・キングはサーフ・トラベル社を設立した男だった。そしてまた‘Pirate’は「ジェリー・ロペスは知ってる?」と目をキラキラさせて知ったかぶりに聞いてきた。私は「うあ・・」と声にし、口がぽかんとマヌケに開いたまま動かけなかった。ジェリー・ロペスは究極のチューブマスターでサーフィン界では有名な人物である。「じゃあ、ジム・バンクは?」と彼はまた別の人物を出してきた!私は驚き、目をぱちくりさせていた。キングとロペス、この2人はサーフィン界では誰もが認める筋金入りのインドネシア・サーフを探求した人物である。私は限りない想像を膨らませ、これは究極のシークレットウェーブにちがいない!と確信した。

「今、天国には誰もいない。そこはあなた1人だけ。嘘じゃない!そこは親友になった人しか連れて行かないんだ。」‘Pirate’が言った。私は「何てラッキーなんだ!」と思いながらビールをもう一杯とロブスター2匹を注文し、この計画を祝った。そして‘Pirate’がまだ 三流‘Pirate’だった頃(彼がサーフィンにはまる前)のとても愉快な話を聞かせてくれた。

明日の出発が楽しみでベットに入っても私は何度も寝返りを打ち、興奮しすぎて眠れなかった。夜明け前に部屋の窓をたたく音がした。彼だ! 私は飛び起き、着替える必要はなかったので身の回りの荷物をカバンに詰めこんだ。 ‘Pirate’は小声で 「さぁ、行こう。」と言い、そして「今からあなたを天国へ連れて行くぞ!」と言った。

ベモコーナーでベモ(ワゴン車)に飛び乗り、3列シートの前方に座った。Kretek(インドネシアのタバコ)の火が‘Pirate’の顔を照らし彼は満足げに、そしてそれを賞賛するような目でゆっくりとタバコを吸いこんだ。車内ではエキゾチックでミステリーな空気が漂い、鼻がツンっとするkretekの甘い匂いの煙が充満した。でこぼこした狭い道を進んで1時間ほど経ったくらいに私はその甘い匂いと車内にいる大衆の臭いでとても気分が悪くなった。

道幅の狭い、穴だらけの道をドライバーは、まるでインドネシアの最高記録を打破するかのようにノンストップで運転を続けるので、私はしきりにシートから跳ね上がり、その度にベモの屋根に頭をぶつけイライラし、早くこの旅路から解放されたいと強く願った。

ようやく私たちはある漁村についた、‘Pirate’が「天国へのヨットをチャーターしてあるんだ。」と言う。私はベモから降りた途端、できたてホヤホヤの馬糞の山に足を踏み入れてしまい、よろめきながら、ベチョベチョと音を立てて歩いた。その臭いが、死んだ魚と乾燥した海草の臭いとで入り混ざり、私の胃をかき回した。好奇心旺盛のローカルが殺到してくる中、私は吐きそうになり、日陰で横たわれる静かな場所を探していた。

‘Pirate’はというと、まるで王様が高級車から降りてくるようにkretek(タバコ)をくわえ、ゆっくりと足を伸ばし、ベモから降りた。彼は大声で「And now we go to Heaven」と言い、村人たちに英語ができることを誇示した。突然、年老いた漁師が慌てながら彼に駆け寄り、私の知らないインドネシア語でしゃべり始めた。

‘Pirate’が言うには、この年老いた漁師が勘違いして、ハリウッドの映画スターがカジキ釣りに来ると思い、ちょうど今朝方カジキ釣り用にチャーターされたらしい。なので、私たちは改めて他のヨットを探さなければならなかった。
魚臭いアウトリガーカヌーが並ぶ湾岸周辺を見まわしたがヨットらしきものは見当たらなく、私が「ここにはヨットがないのか?」と聞くと、彼は「これ全部がヨットだ。この中でどれがいい?」と言われ私は予想外の返答にガッカリした。これと同じようなカヌーでバリ島からヌサレボンガン島まで乗ったことを思い出した・・。私はあてつけに、この中で一番大きいカヌーを指さして「あれは?」と聞いた。

「それにはモーターがないよ。」‘Pirate’、「じゃあモーターがあるのはどれだ?」と私、周りでガヤガヤと冗談を言って騒いでるローカルたちの中で、なかなかヨットが決まらないことに私は不安になった。そして‘Pirate’が「モーター付きはあれだ。」と言って今にも沈みそうな古くてボロい船を指さした。

 
第5回 「シークレットポイントinロンボク島」 前編 終了(2006年07月公開)
 
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 ピーター・ニーリー(Peter Neely) プロフィール
1975年以来30年もの間、バリ島およびインドネシア内各地でサーフィンを楽しんでいる現役オーストラリア人サーファー。バリ島を中心としたインドネシアのサーフィン界の活性化に役立ちたいと1992年に「インドネシアサーフ&ランゲージ」を発行。以来、日本語版は毎年、英語版は半年に1度更新中。( ピーター・ニーリー氏の独占インタビューはこちら
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